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お父さんは誰?

  • Writer: yoichi
    yoichi
  • May 7, 2019
  • 4 min read

ある神学校の教授が妻と共に休暇でテネシー州のガトリンバーグを訪れていたときの話である。 ある朝、この教授と妻の二人は静かで家族的な雰囲気の中で朝食を食べようと思い、その町の小さなレストランに入った。食事が運ばれてくるのを待っていると、身なりの良い白髪の老人が各テーブルの客の間を話して回っているのが目に付いた。その教授はそれを見て取り妻にこう耳打ちした。「彼がこっちに来ないといいな。」 しかし、その老人は彼らのテーブルにやがてやってきた。 「あなた方二人は何処から来たのですか?」彼は親しげな言葉遣いで聞いた。 「オクラホマです。」二人は答えた。 「テネシー州へようこそ来て下さいました。」見知らぬ老人は答えると、続けて「ところで、お仕事は何をしていらっしゃいますか?」と彼ら二人に聞いた。 「私は神学校で教えています。」と教授は答えた。 「ということは、あなたは牧師になる人々にどうやって日曜日のメッセージを語るかを教えているんでしょう? それは丁度良かった。私はあなたにとても良い話を一つ知っています。」そう言うと、その老紳士は、二人が座っているテーブルの椅子を引いて座った。その教授はうなずき、そしてこう思った。「丁度、神学校の生徒に教える話を探していたところだったから、良いタイミングだ。」 その男は「向うに山が見えるでしょう?」そう言ってレストランの窓の方を指差し、話はじめた。 「その山の麓の近くに、未婚の母親の元に生まれた少年がいました。彼は小さい頃に非常に辛い思いをして育ちました。なぜなら、その少年がどこへ行っても必ずある事を聞かれるからです。『ぼうや、お父さんは誰だい?』 学校で、食料品店で、薬局で、必ず人々は少年に同じ事を聞きました。『お父さんは誰?』 次第に少年は、学校の休み時間や昼ごはんの時間にはいつも他の生徒から一人隠れて過ごすようになりました。そして少年は店に行くのも嫌がりました。皆が必ず聞くその言葉が少年を、それほど深く傷つけたのです。 少年が12歳になったときの事でした。新しい牧師が少年の通う教会に赴任してきました。少年は日曜日には教会に行くのですが、いつも礼拝に遅れて行き、早めに礼拝堂から抜け出ていました。なぜなら、例の「お父さんは誰?」という質問を聞きたくなかったのです。 しかしある日曜日、その新任牧師はメッセージの途中で聖句を早口で言いすぎ、咳き込んでしまい、一息落ち着くために礼拝堂の後ろの方に歩いて行きました。そして、新任牧師が後ろの扉の近くに来たとき、少年の事を何一つ知らない新任牧師は、少年の肩に手を置いて何気なく例の言葉を口にしてしまいました。「ぼく、君のお父さんは?」 教会全体が凍りつき静まり返ってしまいました。新任牧師は教会の人々全員が二人の様子に注目している異様な雰囲気を感じました。この雰囲気なら、誰でも容易に「お父さんは誰?」と言う質問の答えを察することが出来る、そういう異様な雰囲気でした。 しかし新任牧師は、状況を悟り、聖霊だけが与えることの出来る知恵を用いて、すっかり怯えていた気の毒な少年にこう言いました。 「ちょっと待てよ。」新任牧師は言いました。「私は君がどこの子か知っているぞ。君は、あの家の人々に、そっくりだ。」そして、新任牧師は続けました。 「君は神様の子供だ。」 そして、その新任牧師は少年の肩を軽く叩いて言いました。「君は、素晴らしい家系に生まれているんだよ。行って、皆にそう言い広めなさい。」 その瞬間、少年の顔に長い間失われていた笑顔が戻り、全く新しくなった人となって、教会の礼拝堂から出て行きました。少年は、もう今までとは同じ少年では有りませんでした。誰かが少年に「お父さんは誰だい?」と聞いても、涼しい顔で「僕は神様の子供だよ」と答えるようになりました。 こう話し終えると、その身なりの良い老人はテーブルから立ち上がり、「良い話だったでしょう?」と一言、言いました。その神学校の教授は「素晴らしいお話でした」と答えました。 その老人は帰ろうとして振り向きながら、こう言いました。「お分かりでしょう。もし、その新任牧師が私に『君は神様の子供の一人だ』と言ってくれなかったら、私は多分、自分の人生の何一つも築くことが出来なかったと思います。」そう言って、老人は立ち去っていった。 その神学校の教授と妻の二人は、ただ呆然としていた。やがて教授は気を取り戻し、ウェイトレスを呼んで聞いた。「私たちのテーブルにさっき座っていた老人をご存知ですか?」 ウェイトレスは微笑んで、こう言った。「もちろんですよ。この町の人は誰でも、あの老紳士を知っていますよ。彼がベン フーパーさんですよ。前のテネシー州知事の方ですよ。」

草は枯れ、花はしぼむ。だが、私たちの神の言葉は永遠に立つ。イザヤ40:8

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